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老後のお金の不安への3つの対処策

 老後の生活費がいくらかかるのか、よくわからずに不安が募る。そんな方はいませんか?

目次

「老後の生活設計について」悩みや不安があると感じる人が63.6%(内閣府)

 前回の記事(「日頃の生活の中で、悩みや不安を感じていますか? 悩みや不安を感じているのはどのようなことについてですか? ~内閣府の「国民生活に関する世論調査」より~」)でも取り上げましたが、内閣府の行った「国民生活に関する世論調査」の中において、次のような設問がありました。

「問7. 悩みや不安を感じているのはどのようなことについてですか。(◯はいくつでも)」

老後の生活設計について63.6%
今後の収入や資産の見通しについて59.8%
自分の健康について59.2%
家族の健康について50.7%
現在の収入や資産について47.0%
進学、就職、結婚、子育てなど、家族の生活上の問題について25.5%
進学、就職、結婚、子育てなど、自分の生活上の問題について23.0%
勤務先での仕事や人間関係について17.3%
家族・親族間の人間関係について16.2%
近隣・地域との関係について7.5%
事業や家業の経営上の問題について6.5%
その他 1.5%1.5%
無回答0.2%
内閣府「国民生活に関する世論調査」 令和5年11月

 「老後の生活設計について」心配をする方が63.6%。

 多くの方が、老後の生活が成り立つのか、不安を持っているようです。

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日頃の生活の中で、悩みや不安を感じていますか? 悩みや不安を感じているのはどのようなことについてで...  前回の投稿では内閣府の「国民生活に関する世論調査」の中から、「問1. あなたのご家庭の生活は、去年の今頃と比べてどうでしょうか。」という質問に対する調査結果...

老後の生活は2,000万円必要!?

 2019年6月に金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」が公表された後、国会での質疑やメディア報道などにより、老後は2,000万円必要になるらしいということで、いわゆる「老後2,000万円問題」が注目を集めました。

 老後におよそ2,000万円の生活費が必要とする根拠として、報告書の中では次のように見積もっています。退職生活に入った高齢夫婦無職世帯が公的年金などで受取る実収入の平均額(209,198円/月)から、実支出の平均額(263,718円/月)を引いた54,520円が毎月の家計の赤字額の平均となるとしたうえで、その毎月の赤字額を30年間(360ヶ月)分を積算して求めた金額(19,627,200円/30年間)となります。

 65歳で定年退職した方が、30年後の95歳まで生活するという大まかな計算になります。これだけ見るとたしかに2,000万円近く必要になりそうだという話になりますが、実はこの報告書の中でも「この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。」と記載されており、実際には個人差が出てくるということになります。あくまでも目安の金額ということになります。

大半の人は金融資産の保有額は2,000万円に届いていない

 この様に、老後に2,000万円の生活費が必要になるという話があると、自分以外の人たちは、みなさんそんなに貯蓄しているのかと気になりますよね。

 次に確認いただくデーターは、金融広報中央委員会が公表している「(参考)家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」からの資料です。

金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む) <問2(a)>

世帯主の年齢平均額(万円)中央値(万円)
20歳代15110
30歳代599130
40歳代811180
50歳代1,212200
60歳代1,862530
70歳代1,683650
世帯主の年齢別

 「平均額」は文字通り調査対象全体の平均になります。一方で「中央値」というのは、一番資産が多い方を先頭に資産の多い順番に並べて、列の真ん中に当たる方がどのくらいの資産を持っているのかをあらわします。

 平均で表すと、一握りの大富豪が全体の平均額を底上げしてしまうことから、「中央値」を見ていただいたほうが、より実感に近い金額と感じられるのではないかと思われます。

老後生活に入る60歳代、70歳代でも2,000万円蓄えている人は少ない?

 この金融広報中央委員会が公表している「(参考)家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」の数字を見ても、2,000万円の金融資産を準備して安心できる老後を迎えているという人はさほど多くないようです。

 「老後2,000万円問題」の計算で使われていたのは、「平均」でしたので、貯蓄額のデータも「平均」で見てみますと、60歳代で1,862万円という貯蓄額のデーターになり、老後に必要とされた2,000万円にほぼ近い金額の貯蓄があることになります。

 一方、同じ貯蓄額のデーターで「中央値」を見てみると、60歳代では貯蓄額が530万円で、老後生活に必要な2,000万円とは大きな差が出ています。

 老後生活を目前に、我が家の家計は2,000万円も貯蓄できていないよという方も、このデーターを見ると多くの世帯で2,000万円もの蓄えを持っていないことがわかるかと思います。

結局のところ私たちの老後の生活費は大丈夫なの?

 ニュースなどを見ると、将来は年金支給額も減るという様な話を聞くし、スーパーに買物に行けば物価高騰を実感してしまう。はたして私たちの老後の生活費は足りるのか?退職して老後生活に入る時に2,000万円溜まっていない時にはどうなってしまうのか?

 老後の生活設計に不安を感じるというのも無理がありません。

 定年退職の年齢が迫って、老後の生活費に不安を感じる方のために、老後のお金の不安を減らすための3つの対処策をご紹介します。

 定年退職の年齢が近づいてきたけれど、全く貯金ができていないという方、老後の年金はきちんと受け取れるのか心配という方のご参考になれば嬉しいです。

老後のお金の不安への3つの対処策

1. なるべく長く働く。定年退職をした後も働いて収入を得る。

 老後のお金の不安の原因の1つは、現役のときのように収入が入ってこなくなることです。公的年金では生活費のすべてが賄えないというときは、不足する分については、パートやアルバイトなどで働いて補うという方法が考えられます。

 「老後2,000万円問題」の根拠となっていた、老後生活で生じる毎月の54,520円(平均額)の不足額ですが、老後のアルバイトやパートタイムで月に5万円ちょっとの手取りを受け取ることができれば、身体が動いて働ける期間は、家計の赤字がなくすことができます。

 厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」のページを見ると、令和5年度(2023年度)の最低賃金(全国加重平均)が1004円となっています。年金の受取額や、年金以外の所得の有無によっても異なりますが、最低賃金の水準のアルバイトやパートをすると仮定すると、月に60時間前後、週に15時間前後の勤務で老後に不足するとされる54,520円(平均額)の手取りを確保できそうです。

 老後の健康状態については人それぞれですし、65歳の定年直後の方と、80歳を超える方の健康状態を同じ様に考えることはできませんが、健康状態が許すのであれば、老後も何らかの仕事を持って、少額であっても勤労収入を得るという考え方は、老後の生活費の不安を少なくしてくれることでしょう。

 仮に夫婦お二人でそれぞれが月に5万円ちょっとの手取りとなる仕事をした場合には、毎月5万円ちょっとの生活費の余裕ができることになります。この余裕資金で貯蓄をして、健康状態が思わしくなくなる時に備えるのもよし、ある程度貯蓄ができていて不安が少ないということであれば、家族との食事や旅行など、思い出を残すために使うこともできます。

2. 生活費の水準を、自身の家計の身の丈にあったものとする。

 次は、定年退職するまでに十分に働いてきたし、老後も働くのはちょっと…という場合、もしくは働きには出るけれど月に5万円の仕事を近くで見つけることは難しいという場合の対処策です。

 公的年金などの収入と現役世代に蓄えた金額の範囲に生活費を収めるという考え方です。

 例えば、ご主人が厚生年金、奥様が国民年金という世帯で月に21万円の年金収入となった場合、生活費を「平均額」の水準で設定せずに、1ヶ月あたりの収入21万円以内で生活できれば、貯蓄がゼロのまま老後生活を迎えても、お金が不足することはありません。

 夫婦ともに国民年金であったり、独身で老後を迎えられる場合には、年金の手取り額が少なくなることから、この方策だけですと難しい場合も出てくるかと思います。その場合には初めに挙げた「1. なるべく長く働く。定年退職をした後も働いて収入を得る。」との併用を検討して見てください。

3. 公的年金と私的年金制度の活用

 先の2つは貯金ゼロのまま、老後生活に突入してしまったという時に検討いただける方策ですが、もしもまだ現役でお仕事をされていて、老後までに数年の時間がある、もしくはまだ30代、40代で、老後生活に備えるだけの時間が残されているという場合には、この3つ目の方策も併せて検討してください。

 老後の生活を支える収入の柱として、基礎年金(国民年金)や厚生年金はなくてはならないものですが、残念ながら、将来にわたってずっと力強い収入の柱として維持されるかどうかというのは不確実です。

 公的年金だけに頼らず、自分自身でもできる準備はしておくに越したことはありません。

 例えば、国は老後に向けて自分でも資産を備える人に向けて、税金などの面で優遇して支援をする制度を用意しています。

 有名なのはiDeCoやNISAなどです。これらの制度を使って資産形成を進めた時に値上がり益については、本来の税金よりも大きく優遇されたり、税金がかからないという制度になっていることから、私たちの老後の生活費になる老後資金を蓄える上では、活用を検討したい制度です。

 また、個人年金保険という商品が保険会社で販売されています。商品ごとに内容は様々ではありますが、現役で働いている時に、個人年金保険で積立をすると、年末調整や確定申告の時に、その年に積立をした金額のうち一定額については、税金を減らしてくれるという制度があります。

 国民の老後生活のための資産形成を支援するために国が用意してくれている制度はうまく活用して、自分でも備えを進めることができれば、老後の生活により安心感が得られるかと思います。

この記事のまとめ

 老後の生活費、老後の生活設計については、不安が大きくなりがちですが、老後の収入は年金だけ、生活費は平均水準が必要という様な考え方を取り去って、老後も収入を得ながら過ごし、不足するときは節約して過ごすという発想もあることを知っておくと、老後の不安はかなり小さくなるのではないでしょうか?

 実際に老後生活を迎える年齢に、2,000万円を蓄えている人は少ないということもデーターにあらわれていますが、多くの人はその中で老後生活を過ごしています。

 必ず2,000万円を準備しないと、老後生活は成立しないというものではありませんので、過度に不安になることなく、準備できる範囲で老後に向けて少しずつ備えを作っていきましょう。

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この記事を書いた人

このブログの主、SORAです。
50歳手前のサラリーマン。
妻とともに関東の近郊都市に暮らしています。

団塊ジュニア世代として生まれ育ち、日本経済のバブルが弾けた後の「就職氷河期」に社会に出ました。バブル経済崩壊後の長期低迷経済の中で社会人生活を送り、ITバブルの崩壊、リーマン・ショック、コロナ・ショックなどの経済不況をくぐり抜けて、本格的な経済成長をあまり実感することなく生活をしてきました。

社会人となって以降、日本経済の不況期を渡り歩くサラリーマン生活を続けてきましたが、50歳目前になって自分自身の将来を見渡してみると、定年の年齢が近づきつつあり「老後」の人生を意識する年齢にもなってきました。

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